CCNP ENCOR合格のための技術解説(STP)

CCNP

こんにちは、トラ男です。
CCNP ENCOR試験では以下の6つの大分類から出題されます。

  • デュアルスタック(IPv4 および IPv6)アーキテクチャ
  • 仮想化
  • インフラストラクチャ
  • ネットワークアシュアランス
  • セキュリティ
  • 自動化

今回はインフラストラクチャ分野の技術知識(レイヤ2:STP)についてまとめていきたいと思います。

STPプロトコル

STPとは、ループ構成のネットワークにおいてL2ループを防ぐための技術です。

規格STP
(IEEE802.1d)
RSTP
(IEEE802.1w)
MST
(IEEE802.1s)
Cisco機器での実装PVST+Rapid PVST+MST
(Rapid PVST+で動作)
インスタンス数VLAN毎に1つVLAN毎に1つ複数のVLANで1つ
インスタンス毎の負荷分散
STPプロトコル

インスタンス

STPにはインスタンスというものがあり、インスタンス毎にトポロジーを構成します。
STPやRSTPはVLAN毎にトポロジーを構成しますが、MSTでは複数のVLANを1つのグループにまとめてインスタンスを構成することが可能です。
インスタンスが増えることでCPUや帯域に負荷がかかるため、VLAN数が多い場合にはMSTでインスタンスをまとめることで負荷の軽減につながります。

ルートブリッジ

ルートブリッジはL2ネットワーク上で一つ選出されるスイッチになります。
ルートブリッジはブリッジIDによって決定されます。
ブリッジプライオリティが最小のスイッチがルートブリッジとなりますが、ブリッジプライオリティが同一のスイッチが複数ある場合にはMACアドレスが最小のスイッチがルートブリッジとなります。

ブリッジID

ブリッジIDはブリッジプライオリティ(デフォルト32768)とMACアドレスによって構成されます。
ブリッジプライオリティの設定は以下のように設定できます。

(config)#spanning-tree vlan VLAN番号 priority 4096(任意の値を指定)
(config)#spanning-tree vlan VLAN番号 root primary(現在のルートブリッジより小さい値にする)

なおブリッジプライオリティはPVST+では、ブリッジプライオリティとMACアドレスに加えて拡張システムID(VLAN ID)で構成されます。
そのため、PVST+ではブリッジプライオリティは4096の倍数(0,4096,8192…32768…61440)となります。

BPDU(Bridge Protocol Data Unit)

STPが動作しているスイッチ間で情報を交換するために利用するフレームをBPDUと呼びます。
BPDUは定期的にマルチキャスト(0180.c200.0000)で送信します。
BPDUには2種類あり、「ルートブリッジのIDやルートブリッジへのルートパスコスト等を伝えるConfiguration BPDU」や「レイヤ2トポロジに変更があったことを伝えるTCN BPDU(Topology Change Notification BPDU)」があります。

Configuration BPDUには以下の情報が含まれます。

・ルートID(ルートブリッジのブリッジID)
・ブリッジID(自身のブリッジID)
・パスコスト(ルートブリッジに至るまでのルートパスコスト)
・ポートID(自身のポートID)
・Helloタイム(BPDUの送信間隔:デフォルト2秒)

指定ポート(DP)

各リンクに一つ存在し、パケットを転送するポートのことでルートブリッジに最も近いポートです。
ルートブリッジのポートはすべて指定ポートとなります。

ルートポート(RP)

ルートブリッジ以外のすべてのスイッチに一つ存在し、パケットを転送するポートのことです。
ルートポートの対向ポートは必ず指定ポートとなります。

非指定ポート、ブロッキングポート(BP)

指定ポートでもルートポートでもない、各L2ループに一つ存在し、パケットを転送しないポートのことです。

ポートの選出

ルートポートの選出は以下の順で行われます。

  1. 各ポートのルートパスコスト
  2. 送信元ブリッジID
  3. 送信元ポートID

指定ポートの選出は以下の順で行われます。

  1. 各スイッチのRPのルートパスコスト
  2. 送信元ブリッジID
  3. 送信元ポートID

パスコスト

ポートの帯域幅によって決まる値がパスコストで、速度が速いほどパスコストは小さくなります。

帯域幅、リンク速度パスコスト
10Gbps2
1Gbps4
100Mbps19
10Mbps100

なおルートブリッジまでのパスコストの合計値をルートパスコストと呼びます。

パスコストには、ショートパスコストとロングパスコストという2種類があります。
ショートパスコストはSTPとRSTPのデフォルトのパスコストです(上表)。
ロングパスコストはMSTモードのデフォルトのパスコストです。

ポートID

ポートプライオリティ(デフォルト128)+ポート番号によって構成され、最小のものが指定ポートやルートポートに選出されます。

STP(Spanning Tree Protocol)


IEEE802.1dで定義されているSTPは、ブロッキングポート(非指定ポート)を選出し、データフレームを転送しないことによりL2ループを防止します。

STPタイマー値

タイマー説明デフォルト値
Hello TimeBPDUの送信間隔2秒
Max AgeBPDUの受信待機時間
Max Ageタイマーを過ぎてもBPDUを受信しない場合は
STPの再計算が走る(ブロッキングポートが変わる)
20秒
Forward Delayリスニングとラーニングが使用する待機時間15秒

STPのポート状態遷移

ポートがリンクアップした直後にはパケットの転送はしません(ループ発生の可能性があるため)。
ブロッキング状態からMaxAgeタイマーである20秒を待って、リスニングに移行しForwardDelayタイマーの15秒を待って、ラーニングに移行しさらに15秒待って、フォワーディングに移行するようになります。

ポート状態データの転送MACアドレス学習BPDU送信BPDU受信
ディセーブル
ブロッキング(BLK)
リスニング(LSN)
ラーニング(LRN)
フォワーディング(FWD)

ディセーブル・・・shutdown状態で何も転送されない状態

ブロッキング・・・BPDUの受信はするが、データの転送はしない状態

リスニング・・・BPDUの送受信を行い、MACアドレスの学習もデータの転送もしない状態

ラーニング・・・BPDUの送受信を行い、MACアドレスの学習をする状態
        データの転送は行わない。非指定ポートに選出されればブロッキングに移行する

フォワーディング・・・ルートポートもしくは指定ポートとなり、データを転送する状態

RSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)

RSTP(Rapid PVST+)はSTP(PVST+)を改良して高速コンバージェンスを実現したプロトコルです。
STPでは障害発生時に収束まで最大50秒かかりましたが、RSTPでは数秒で収束可能となります。

RSTPでは、障害発生時にトポロジー変化の発生源であるスイッチがTCビットのセットされたBPDUをNW全体にフラッディングします。
その後、Handshake(Proposal & Agreement)により高速コンバージェンスします。

RSTPはIEEE802.1wで標準化されています。
RSTPはSTPと下位互換性があり、STPスイッチと相互接続が可能となります。

RSTPでは非指定ポートがなくなり、代替ポートとバックアップポートとなりました。

代替ポート(AP)

ルートポートのバックアップ用のポートです。
ルートポートがリンクダウンした際に、すぐにルートポートに代わりフォワーディングになります。
代替ポートはルートポートと指定ポートに選出されなかったポートであり、STPでの非指定ポートとなります。

バックアップポート(BP)

指定ポートのバックアップ用のポートです。
指定ポートがリンクダウンした際に、すぐに指定ポートに代わりフォワーディングになります。
STPにはない概念のポートとなります。

RSTPのポート状態遷移

ポートがリンクアップした直後にはパケットの転送はしません(ループ発生の可能性があるため)。

直接リンク障害であれば、ルートポートがダウンすれば代替ポート(ディスカーディング)が速やかにルートポートに切り替わり、指定ポートがダウンすればバックアップポート(ディスカーディング)が速やかに指定ポートに切り替わり、フォワーディングに移行するようになります。

間接リンク障害であれば、TCビットをつけたBPDUがフラッディングされHandshake(Proposal BPDUとAgreement BPDU)により高速収束(フォワーディングに移行)します。

ポート状態データの転送MACアドレス学習BPDU送信BPDU受信
ディスカーディング(BLK)
ラーニング(LRN)
フォワーディング(FWD)

ディスカーディング・・・BPDUの受信はするが、データの転送はしない状態

ラーニング・・・BPDUの送受信を行い、MACアドレスの学習をする状態
        データの転送は行わない。代替ポートに選出されればディスカーディングに移行する

フォワーディング・・・ルートポートもしくは指定ポートとなり、データを転送する状態

Proposal BPDU

自身がルートブリッジであり、ポートが指定ポートであると主張するBPDU

Agreement BPDU

受信したProposal BPDUの情報から相手ポートが指定ポートであると判断した場合に、相手を指定ポート・自身をルートポートとして認めてFWDステートに移行し、さらにそれ以外のポートを一時的にディスカーディング状態にしてAgreement BPDUを返信します。

MST(Multiple Spanning Tree)

複数のVLANをインスタンスという単位で処理するRSTPに基づいたスパニングツリープロトコルです。
IEEE802.1sで標準化されています。
MSTではRSTPの設定に加えて以下の設定が必要になります。

 ・ リージョンの定義
 ・ リビジョン番号の定義
 ・ インスタンスとVLAN番号の組み合わせ
 ・ インスタンス単位でのプライオリティの定義

今回はここまでとなります。続けてCCNP ENCORのインフラストラクチャ分野に関してまとめていきたいと思います。
第四回はこちら

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