こんにちは、トラ男です。
CCNP ENCOR試験では以下の6つの大分類から出題されます。
- デュアルスタック(IPv4 および IPv6)アーキテクチャ
- 仮想化
- インフラストラクチャ
- ネットワークアシュアランス
- セキュリティ
- 自動化
今回はインフラストラクチャ分野の技術知識(レイヤ3:OSPF)についてまとめていきたいと思います。
OSPF(Open Shortest Path First)
OSPFはリンクステート型のダイナミックルーティングプロトコルです。
ダイクストラアルゴリズム(SPFアルゴリズム)による高速コンバージェンスが特徴です。
VLSM(Variable Length Subnet Mask:可変長サブネットマスク)をサポートしています。
30分に1度 LSDB(OSPFで使用するデータベース)を同期させます。
NWに変化があるとLSUが送信されます(トリガードアップデート)。
等コストロードバランスをデフォルトでサポートします。
エリアという概念による階層設計となります。
エリア
OSPFでは、エリアを単位としてグループ分けし、ネットワークを管理します。
エリアが1つであればシングルエリア、エリアが複数あればマルチエリアと呼びます。
マルチエリアOSPFにすることで、他エリアのルーティング情報を集約することができます。
エリア0は「バックボーンエリア」とも呼ばれます。
マルチエリアOSPFの利点(大規模向き)
・集約によりルーティングテーブルが小さくなり、オーバーヘッドを減らせる
・障害発生時のSPF計算はエリア内だけなので、高速収束が可能となる
OSPFのルータタイプ
ルータタイプ | 説明 |
内部ルータ | すべてのIFが同一エリア内に収まっているルータ |
バックボーンルータ | バックボーンエリア(エリア0)に接続するIFを持っているルータ |
エリア境界ルータ (ABR) | IFが複数のエリアにまたがっているルータ ※マルチエリアOSPFにおいてABRはバックボーンエリアと接続している必要がある |
AS境界ルータ (ASBR) | 外部ASと接続されたIFを持っているルータ |
OSPFステート
OSPFを起動したルータは他のOSPFルータと隣接関係を確立します。そのOSPFステートの流れは以下になります。
DOWN→INIT→2WAY→EXSTART→EXCHANGE→LOADING→FULL
OSPFステート | 説明 |
DOWN | Helloパケットを受信していない初期状態 もしくはHelloパケットを受信できずDeadタイマーを過ぎて隣接関係が解消された状態 |
INIT | Helloパケットを受信し、相手を認識した状態 |
2WAY | お互いのルータを認識し、DROTHER同士は経路情報を交換しないのでこの状態で収束 |
EXSTART | DR、BDR選出済みの状態 |
EXCHANGE | OSPFデータベースの交換 |
LOADING | 詳細情報を確認 |
FULL | コンバージェンス(最適経路の計算が完了した状態) |
またOSPFではHello/Deadタイマーが一致していないと隣接関係を構築することはできません。
その他にもエリアIDやネットワークマスク、スタブエリアフラグ、(設定してある場合は)認証パスワードも一致していないといけません。
ネイバールータがINITのままの場合、Helloパケットを受信できていないことが考えられます。
またネイバールータがEXSTARTやEXCHANGEのままの場合、IFのMTUが一致していないことが考えられます。
DR/BDR/DROTHER
マルチアクセスネットワーク環境において、DRとBDRが選出されそれ以外のルータはDROTHERとなります。
DR | 代表ルータ 全OSPFルータと隣接関係を構築します マルチキャスト(224.0.0.5)で全OSPFルータにLSUを送信する |
BDR | DRのバックアップルータ 全OSPFルータと隣接関係を構築し、DR障害時にはすみやかにDRとなる |
DROTHER | DR,BDR以外のルータ DRおよびBDRと隣接関係を構築します DRおよびBDRの障害発生時にはBDRにいずれかのルータが昇格する マルチキャスト(224.0.0.6)でDR/BDRにLSUを送信する |
DR/BDRの選出
DRとBDRの選出は以下の優先順位に従って行われます。
- インターフェースのプライオリティ値(高いもの:0-255)
- ルータID(高いもの)
なおプライオリティ値を0に設定するとDR/BDRに選出されることはありません。
OSPFのネットワークタイプ
ネットワークタイプ | DR/BDR | Hello/Dead | 説明 |
ブロードキャストマルチアクセス ip ospf network broadcast | 選出する | 10/40秒 | 一つのIFで複数のルータと接続する |
ノンブロードキャストマルチアクセス ip ospf network non-broadcast | 選出する | 30/120秒 | ブロードキャストが使えないNWで 一つのIFで複数のルータと接続する |
ポイントツーポイント ip ospf network point-to-point | 選出されない | 10/40秒 | 1つのIFで1台のルータと接続する |
ポイントツーマルチポイント ip ospf network point-to-multipoint | 選出されない | 30/120秒 | 1つのIFで複数のルータと接続する WAN(フレームリレー)などで使われる |
LSAタイプ
タイプ | LSA名 | 生成ルータ | フラッディング エリア | 説明 |
1 | ルータリンク | 全ルータ | 自身のエリア内 | 同じエリア内のルータのリンク情報 LSAには以下の情報が含まれる ・OSPFルータID ・リンク数 ・各リンク詳細情報(IPアドレス/コスト値etc) |
2 | ネットワークリンク | DR | 自身のエリア内 | 同じエリア内のルータの一覧情報 LSAには以下の情報が含まれる ・DRのIPアドレス ・セグメントのサブネットマスク情報 ・セグメント上のルータIDの一覧 |
3 | 集約リンク | ABR | 異なるエリア | 他のエリアへの経路情報 LSAには以下の情報が含まれる ・各エリアの経路情報 ・コスト情報 |
4 | ASBR集約リンク | ABR | 異なるエリア | ASBRへの経路情報 LSAには以下の情報が含まれる ・ASBRのルータID ・ASBRに到達するまでのメトリック値 |
5 | AS外部リンク | ASBR | AS全体 | 外部ASへの経路情報 LSAには以下の情報が含まれる ・非OSPFネットワークアドレス ・サブネットマスク ・メトリック値 ・転送アドレス |
7 | NSSAリンク | NSSAのASBR | NSSAエリア内 | 外部ASへの経路情報 LSAには以下の情報が含まれる ・非OSPFネットワークアドレス ・サブネットマスク ・メトリック値 ・転送アドレス ※LSA7は他エリアに流れる際にLSA5となる |
ルータID
OSPFルータを識別するための一意なID(32ビットでIPアドレスと同じ表記)のことです。
以下の優先順位でルータIDは選出されます。
- router-idコマンドで明示的に指定
- 起動しているLoopbackインターフェースの中で最大のIPアドレス
- 起動しているインターフェースの中で最大のIPアドレス
経路集約
OSPFでは自動で経路集約は行われません。
ABRでエリア間の経路集約をするにはarea rangeコマンドを使用します(LSAタイプ3)。
ASBRで外部ASルートの経路集約をするにはsummary-addressコマンドを使用します(LSAタイプ5)。
今回はここまでとなります。続けてCCNP ENCORのインフラストラクチャ分野に関してまとめていきたいと思います。
第六回はこちら。
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